Book Village【1】
2008.03.06 Thu
イエローサブマリン/山際淳司
本の話、やっと書きます。
山際淳司といえば『江夏の21球』や『スローカーブを、もう一球』で有名なスポーツライティングの第一人者。ボクが読書、しいてはスポーツにのめり込むキッカケとなったのも山際淳司さんの作品だった(どの作品だったかが思い出せない)。
山際さんの作品は結構持っているけど、そのほとんどがノンフィクションだけど、今回の『イエローサブマリン』は長編野球小説。
普段小説を全く読まないため、スゴく新鮮な気持ちで読めた。
ストーリーは面倒なので書きません。ブックオフで100円で売ってますんで買って読んでください。
この小説、例えば小説好きが読んだとする。
はたして面白い作品なのだろうか。ノンフィクションを書くのと同じように山際さんの文章は淡々としている。無理やりに涙を誘うこともなく、感動の波を立てることもなく。
一番大切なのはヒーローなんていないコトだ。
彼の作品には主人公はいるが決してヒーローではない。
“江夏は21球を投じてヒーローになったじゃないか!”
そう言う人もいるだろう。でも、あの満塁は江夏が自ら招いたものであるし、あの場面での本当に相対していたモノとは、西本監督でもバッファローズでも古葉監督でもないハズ。
江夏は江夏自身と戦っていた。その人間模様を描いた作品だ。
イエローサブマリンでも、『スローカーブを、もう一球』のような、どこか人とは距離を置きながらモノを考える田島光の人間模様が描かれている。
予想を裏切るような展開でもないし、野球の描写もそんなにあるわけじゃない。
小説好きだけじゃなくて、野球好きにももしかしたら退屈な作品かもしれない。
でも、この作品を読んでいて、
“マイナーリーグを見て回りたい!”
と、切実に思った。1992年に執筆された作品にも関わらず、マイナーリーグという世界を書いたのは凄いと思った。
そのマイナーリーグもメジャーへのプロセスという位置付けじゃないように思える。その場所場所にそれぞれの野球がある。それぞれの文化がある。そこに一人の日本人が野球をする。
それだけの話。
朝の匂いってあんじゃん。あれみたいに、どことなくボールパークへ誘う匂い。
そういうのが好き。
印象に残った言葉で、日本の球団がマイナーリーグのチームと対戦するのを断る。自分たちはメジャーだと主張している。その試合の主催者側の一人の一言。
「メジャーリーグはアメリカの二十あまりの都市に根を下ろしているにすぎない。われわれはアメリカのなかだけでも百五十以上の町にフランチャイズを置き、多くの野球ファンに愛されてきた。そのナショナル・アソシエーションを代表とするチームが“マイナー”という一言で片付けられてしまうのは残念としかいいようがないな」
よく考えてみればその通りで、一番レベルの高いのはメジャーリーグだけど、一番流布しているのはマイナーリーグ。
アメリカ全土でもっとも“メジャー”な野球を一度見てみたいと思った。
そこに垣間見える人間模様をもっと見てみたいと思った。

